「エンジニアリング(工学)」を学ぶこととは

イーストアングリア大学
ステファノ・ランディーニ博士 インタビュー

UPAA: 自己紹介とイーストアングリア大学(UEA)工学部の紹介をしていただけますか

博士: 皆さん、こんにちは。UEA工学部の入学担当ディレクター兼国際化担当ディレクターのステファノ・ランディーニです。私はエネルギー・システム、熱伝達、エネルギー貯蔵の研究経験があり、UEAでは熱力学、エネルギー貯蔵、発電を教えています。UEAにはエネルギー工学の専攻課程があり、BEng(学士号)とMEng(学部と大学院を合わせたレベル)、さらに大学院、博士号レベルで機械工学、電気・電子工学、および総合工学を学ぶことができます。

UPAA: エンジニアリング(工学)を学ぶこととは、どういうことなのでしょうか。学生が学ぶ主なことは何ですか。

博士: 回りを見れば、目にするものすべてが、ある時点においてエンジニアによって設計されています。私たちは、交通、通信、建築環境、エネルギー・インフラ、発電、そして、食料、水、ヘルスケアの未来を解決することに取り組んでいます。エンジニアリングとは、世界的な課題を解決してくれるものを作るためのテクノロジーを駆使するものなのです。

UEAでのエンジニアリングの教授方法は、1年次の最初の授業から理論と実践を結びつけることです。学生たちは、私たちの産業界のパートナーのニーズに基づく実生活上の問題に合致したチーム・プロジェクトに取り組みます。学位に向かって進む際にも、このプロジェクト主導の教育アプローチを維持し、学生は2年次と3年次に、全国レベルのコンテストで競い合っています。

私たちのプロジェクト主導アプローチの一例として、2年次の学生をエンジニアリングの進路別に分けて行う「グリーン・カー・チャレンジ」では、機械チーム、電子チーム、エネルギーチーム、一般チームが編成されています。彼らは私たちの施設を使い、電気自動車のさまざまな側面に取り組んでいます。完成されたクルマが動くのを見ることは素晴らしい気分です。

UPAA: なぜ学生はエンジニアリングを学ぶべきなのでしょう。

博士: エンジニアリングは、現実の諸問題に取り組みテクノロジーを使ってそれらを解決したいと考える学生にとって、素晴らしい選択です。私たちは数学者や物理学者とは異なり、日々常に現実の諸問題を解決しています。エンジニアの仕事は物事を起こして機能させることで、学生やプロのエンジニアにとって、そのキャリアはとてもチャレンジングで、興味深く変化に富み、やりがいのあるものです。

エンジニアは魅力的な職業であるだけでなく、良い給与も得られます。多くの学生が、仕事で成功をおさめ、高収入を得たいという野心を持っており、工学部はそのための道筋を与えてくれます。エンジニアの初任給は新卒者の中で最も高く、将来すぐに、より高給の職務に就くことも可能です。3つ目の利点は柔軟性で、数値に対する確かな理解、問題解決能力、技術的能力を持つことで、将来のキャリアの選択肢が広がります。

UPAA: 学生にはどのような特徴/資質を求めていますか?

博士: 学問的に言えば、私たちは数学に関して豊かな素養が必要です。エンジニアとして常に数学を使うので、数学に自信があることが必要です。また、物理学、計算科学、化学、あるいは生物学など、他の科学の素養を持っている学生にも来てほしいと考えています。これらの入学要件はさておき、私たちは問題を解決するのが好きな人を求めています。私たちは、大学で取り組むプロジェクトを本当に受け入れることができる学生を求めています。物事をよりよくしたいという探求心と欲求は、私たちにとって重要です。世の中を良くしたいという気持ちがなければ、エンジニアとして成功することはできません。その他の好ましい資質としては、忍耐力、粘り強さ、謙虚さがあります。エンジニアとして、一度や二度、三度で成功することはそんなにありません。成功するプロジェクトや製品は、何度も何度も挑戦し、そのたびに改良を重ねた結果なのです。エンジニアとして、特に工学部の学生として、謙虚であり、自分がすべてを知っているわけではないことを理解する必要もあります。自分が学ぶためにここにいることを受け入れ、講師や仲間の指導やサポートを受け入れる必要があります。

UPAA: 工学を学ぶことに関して、よくある思い違いにはどのようなものがありますか?

博士: エンジニアは技術的な部分のみを行っているというものですね。私たちは技術的なスキルを持っていますが、技術的な問題をはるかに超えた実際のプロジェクトに取り組むために、そのスキルを使っているのです。現実の世界にエンジニアリングを応用するためには、人や予算、厳しい納期、技術的な制約に対処する必要があります。もうひとつの思い違いは、エンジニアは「汚い手」で物を作るものだというものです。エンジニアリングはそれ以上のものであり、私たちはプランニング、シミュレーション、そしてコンピューティングの一端を担っています。もしコンピューティングが好きなら、計算流体力学(CFD)や有限要素解析(FEA)に携わる数値工学者になることができます。時として人は、エンジニアリングは男子のものだと思いがちですが、それはもはや100%違います。私たちの学校には素晴らしい女性エンジニアがいて、その中で最も優秀な生徒の一人は、BF1システムズで実習し、フェラーリF1カーのハンドルの開発に携わりました。イタリア人としてとても誇りに思います。ステレオタイプとして最後に挙げられるのは、エンジニアは「クール」ではないというものですが、それも真実ではなく、私たちは面白くて社交的な人々です。UEAのエンジニアリング・ソサエティでは、いつもたくさんのソーシャル・イベントを開催していますし、プロのエンジニアも仕事を楽しいものしたり、社交的であったりするのが大好きなのです。

UPAA: 工学部の学生はどのような施設を利用できますか?

博士: UEAでは、英国政府が750万ポンドを投じて2021年にProductivity Eastを開設し、広範な産業界の協力者のサポートを受けています。ハイスペックなコンピューティングとソフトウェア能力、積層造形と減算造形、材料テスト、エレクトロニクス・テスト・リグ、先進的な協働ロボット(CoBot)によるロボット工学、油圧/機械/熱力学/力学テスト・リグ、制御システム施設などなど、あなたが思い描くものなら何でも揃っています。学生は、1年次から最終論文やプロジェクトに至るまで、学位課程で毎日これを使用していますが、大学院生や研究者、産業パートナーも使用しています。

UPAA: 学部では学生に対してどのようなサポートがありますか?

博士: 私たちは学生へのサポートに誇りを持っており、エンジニアリングのキャリアをスタートさせるための実践的なスキルを授けるように学位課程が設定されています。工学の勉強は時には困難ですが、私たちは学生へのさらなる支援のための準備を整えています。学生には担当アカデミック・アドバイザーがつきますが、私個人である場合も、同僚の場合もあったりします。私たちはコースを通して学生を指導するだけでなく、その他の問題についてもサポートします。私たちの学部では、学生とスタッフのバランスがとても良く、学生8人に対しアカデミック・スタッフが1人という割合なので、学生一人ひとりに時間と目配りを向けることができます。私たちの学校では、学生が毎週私たちと話ができるようなオープン・ドア・ポリシーも設けていますし、UEAでは素晴らしい中央機構および専門家によるサポート・サービスも利用可能です。

UPAA: 工学の学位を取得した後、学生が進む一般的な進路はどのようなものでしょうか。

博士: UEAの卒業生は高い需要があります。UEAは毎年3月に「セレクト・スキーム」を実施しており、学生は毎年5社を選んで模擬面接を受けることができ、提携企業の上級職員から詳細なフィードバックを受けます。卒業時には、UEAの工学部の学生の94%が、これらの産業パートナーから少なくとも一つの内定を得ています。

工学部の卒業生は、卒業後5年間、全ての卒業科目の中で最も高い給与を得ています。卒業生の大半はエンジニアリングの仕事に就きますが、学んだスキルを活かして別の分野で働く人もいます。エンジニアリングは、他の産業や教育、人道的な仕事、さらには政界にもつながる可能性があり、成功した政治家の多くがエンジニアリングのバックグラウンドを持っています。エンジニアリングは学生が考えている以上に柔軟性があり、学んだスキルはさまざまな分野に転用可能なのです。

UPAA: 工学部卒業生の将来の就職の機会はどうなると予想しますか?

博士: 私は、20年後には卒業生の約半数がエネルギー、特に再生可能エネルギーの分野で働いていると予想しています。また、新交通システムや都市計画のような大規模なインフラプロジェクトに携わる人がいることも期待できます。エンジニアリングも、国内プロジェクトだけではなく、むしろ国際的なプロジェクトや協力が増え、よりグローバルになると思います。また、発展途上国が速いペースで発展を続けることも予想され、多くの機会がもたらされるでしょう。工学部の卒業生には、世界中を旅することに慣れることが求められるでしょう。

もうひとつの大きな発展は、気候変動の影響に関することと、プロジェクトが持続可能でカーボンフットプリントを最小限に抑えるものにするということにあります。これは、初期の製造過程においてだけでなく、製品やプロジェクトのライフサイクルにおける継続的な排出も含まれます。最後に、エンジニアはより洗練されたデータアナリストになることが必要で、AIやロボット工学を理解する人材が求められるようになるでしょう。

エンジニアリングが学べるUPAA海外協定大学と専攻

ピックアップ!
第5弾「エンジニアリング」の授業を行っていただく ステファノ・ランディーニ博士 が在籍する、イギリスの名門大学
University of East Anglia(イーストアングリア大学)
- Computer Systems Engineering (BEng)
- Energy Engineering (BEng/MEng)

3年間で学士号!「International Year One」コース

Ireland (アイルランド)
University College Dublin(ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン)
- Biosystems Engineering (BEng)
- Chemical and Bioprocess Engineering (BEng)
- Electronic Engineering (BEng)
- Mechanical Engineering (BEng)

4年間で修了できる「Pathway」コース

United States of America(アメリカ)
Florida International University(フロリダ国際大学)
- Biomedical Engineering (BS)
- Civil Engineering (BS)
- Computer Engineering (BS)
- Electrical Engineering (BS)
- Environmental Engineering (BS)

San Francisco State University(サンフランシスコ州立大学)
- Civil Engineering (BS)
- Computer Engineering (BS)
- Electrical Engineering (BS)

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